ごあいさつ
本日は なごみ管弦楽団 第3回定期演奏会 にお越しいただき誠にありがとうございます。
第1回のご挨拶では大都市圏のアマチュア・オケの多さと各団体の運営の様々な苦労に触れ、第2回のご挨拶では「名曲を楽しく」という私達のコンセプトの根底にある思いに触れました。
ここまでの3年間は長くもあり短くもあり、といった印象ですが、我等が若きマエストロの下、「なご管」の「音」、「なご管」の「アンサンブル」、というものがまだ小さな若い芽という程度ではありますが、生まれてきたように思います。この芽を大切に育てていきたいものです。
本日は、ロマン派序曲の金字塔とも言えるウェーバーの「魔弾の射手」、古典派の雰囲気を継承しながらも明確なベートーヴェンらしさを随所に散りばめている交響曲第2番、そして、当時の新大陸にまで活動拠点を広げながらも一生をボヘミア音楽の昇華に捧げた偉大な音楽家ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」を、プログラムと致しました。
この1年間も沢山の方々にご支援をいただき、本日のステージも多くの方にご協力をいただいて、実現の運びとなりました。その感謝も含めて、心を込めて、お届け致します。なごみ管弦楽団 団員一同
曲目紹介
◇ウェーバー/歌劇「魔弾の射手」序曲
ウェーバーが活躍した当時のドイツ語圏でのオペラはイタリア系とフランス系が圧倒的優位に立っており、このことはドイツの音楽家達にとってなかなかのジレンマでもあったらしく、モーツァルトやシューマンなども非常に残念なことと思っていた、というエピソードが残っています。
実際、この頃のドイツ語オペラのめぼしい作品は、モーツァルトの「魔笛」、「後宮よりの逃走」、ベートーヴェンの「フィデリオ」くらいです。こんな中で、ドレスデンでのウェーバーは他分野の文化人や芸術家などとの交流の中で、ドイツ語オペラの創作に意欲を持ち、民話から題材をとってこの作品を作りました。
当時の常識で劇場向きではないと思われたテーマだったのですが、初演はオペラ史上まれに見る大成功を収め、ウェーバーは「ドイツ歌劇の創始者」とまで呼ばれるようになりました。後年、ベルリオーズは「これ程に完璧なスコアはない。」と絶賛しています。この序曲も、現代に至るまで演奏される回数の非常に多い序曲であり、世界中で愛されてきました。
物語は、弓の名人がライバルや悪魔にそそのかされて呪いの矢を使い、誤って恋人を射てしまいますが、最後は呪いも解けて大団円、となる 3 幕のお話です。
さあ、ここまで読んで下さったあなたの頭の中でも、冒頭の素敵なホルン四重奏が響いてきたでしょうか・・
◇ベートーヴェン/交響曲第 2 番
なごみ管弦楽団では一昨年の 5 番、昨年の 1 番に引き続き、今年はベートーヴェンの 2 番の交響曲をとりあげます。ベートーヴェンの 9 つの交響曲のなかでおそらく、一番演奏回数が少ないもののひとつだと思います。
ベートーヴェンはこの曲を書いたころ耳の異常がひどくなり、有名な「ハイリゲンシュタットの遺書」を書いたのも知られています。
ベートーヴェンの聴力の異常は耳の問題ではなく神経の異常だったらしく、まるでチューバや蓄音機のような補聴器もほとんど効果なく、使われることもあまりなかったようです。しかし、この交響曲にはそのようなことは片鱗も感じさせることなく、明るく美しい曲です。
この曲の初演は 1803 年でベートーヴェンには 19 世紀初の交響曲といえます。ほかの曲と一緒に演奏したこともありますが、この演奏会は大変な人気で入場料が当日になって 2 ~ 3 倍に値上げされたそうです。
【第 1 楽章】
はじめにゆっくりした導入部があるところはハイドンやモーツァルトなど 18 世紀の多くの交響曲と同じです。ここではゆっくりとはいえ、弦楽器に 64 分音符のパッセージがあります。
Allegro に(速く)なってチェロとビオラがメロディを演奏し、ホルンとファゴットとクラリネットが第2主題のメロディを演奏します。曲は展開部を経て再現部、コーダと続きます。
【第 2 楽章】
大変美しい旋律でこの旋律は後に歌詞をつけて歌曲に編曲されたそうです。第一交響曲ではラッパの一種のように扱われていたクラリネットにメロディを受け持たせたりしています。
【第 3 楽章】
ベートーヴェンの交響曲で初めて「スケルツオ」とかかれました。スケルツオというのは「諧謔的な」と言う意味だそうですが、「諧謔」などといわれてもさっぱりわかりません。辞書によると「気の利いた冗談」とか言う意味だそうです。聴いていて「おどけて」聴こえるとよいのですが。
【第 4 楽章】
いきなり速い音楽で始まります。いわゆるソナタ形式です。呈示部、展開部、再現部とすすみますが、4楽章の最初の旋律がどんどん繰り返されるようになったと思うといきなり曲が終わります。ぼーっとしていると曲が終わってしまうかんじなのであまりぼーっとせずにきいてくださいませ。
◇ドヴォルザーク/交響曲第 9 番「新世界より」
ドヴォルザークがチェコの首都プラハを発ちアメリカに向かったのは 1892 年。その年に生まれた人が今生きていたとしたら大体 127 歳くらい。つまり、この曲は人が生きられる限界の年数以上の年月を人の心の中に生き続けてきたことになる。
今日この曲を聞く人のために、この曲が書かれたニューヨークから、地球の反対側にある神奈川県川崎市まで、127 年の歳月をかけて旅をしてきました。
今日はドヴォルザークが生まれた、「百塔の街」プラハを擁するボヘミア、この曲が書かれた、「人種のるつぼ」ニューヨーク、そして今私たちのいる日本へとこの曲が長い旅をしてきたことを感じながらお聴きください。
【第 1 楽章】
序奏ビオラ、チェロ、コントラバスによる静かな旋律 (1 小節目 ) から始まりホルンによる第 1 主題 (24 小節目、Allegromolto) の変奏、繰り返し。その後、フルートによる第 2 主題 (149 小節目 ) の変奏、繰り返し。変奏が多いのであまり飽きは来ない。よく聴くとボヘミアの香りがするとかしないとか。
【第 2 楽章】
イングリッシュホルンによる第 1 主題 (8 小節目 ) は超有名 (Ultrapopular)。個人的にはアメリカ東部の山岳地帯を想像してしまう。ドヴォルザークは「アメリカの自然ってこんな感じですよー、ボヘミアのみなさん!」と言いたかったんです。きっと。
フルートとオーボエによる第 2 主題 (46 小節目、Unpocopiumosso)。何となく家に帰りたくなってしまうような旋律。帰りたくなってもここで帰るのは NG!
途中、第 1 主題がバイオリン、ビオラ、チェロの 3重奏として繰り返される。
【第 3 楽章】
肩から踊りたくなるようなスケルツォ ( 踊り )。聞いているだけじゃつまらない方はひそかに足でタップをしてみると楽しい。コツは 2 小節 (3 拍子 +3 拍子 ) の中がヘミオラ (1+2+2+1) になっているのでその 2 小節に必ず「強、弱」をつけること。
2 つ目のトリオでは、ドヴォルザークとしてはあまり土臭くないがやはり美しい旋律 (61 小節目、Pocosostenuto) がスケルツォの小気味いいリズムに乗って引き立てられている。
【第 4 楽章】
序奏頭の H-C というのはジョーズではない。ホルン、トランペットによる第 1 主題 (10 小節目 ) は決然としていて、かっこいい、の一言。クラリネットによる第 2主題 (68 小節目 ) は旋律としても美しいがそこに至る過程は尚更美しい。
第 2 主題が (227 小節目、Intempo) にファースト・バイオリンの旋律として返ってくる際にはファースト・バイオリンの音量指定は mf( メゾ・フォルテ ) になっている。その前に弦楽器全体に moltocresc( モルト・クレッシェンド ) の指定が成されていて、立体感が生まれるように工夫されている。
最後はドヴォルザークお得意の涙の大円団 (!?) のあと、夕日が山の端に消えて行って、おしまい。