ごあいさつ

本日は「なごみ管弦楽団」第7回定期演奏会にお越しいただき、真にありがとうございます。

はなから、音楽と無縁のようなことを書きますが、近年は、地球規模と言ってもよいほどの異常気象が、我々日本人や、同じくらいの緯度にある国々の人々から、「春」と「秋」を奪い去ってしまったかのようで、誰しもが、体調管理に、より気を使わざるを得ないこの頃です。

こんな中で、アマチュアとは言え、私達が心に置いている、「名曲を楽しく演奏」して「来て下さった方々に楽しく聴いていただく」、という目標のためには、心身ともに健康であり続けなければならず、忙しない日々を過ごしつつも、個々に努力して参りました。その努力を、よい結実にして、お届けできれば幸いです。

今回も名曲であり難曲でもある3つの素晴らしい作品を、皆様から笑顔と暖かい拍手を頂くために、力の限り演奏いたします。なごみ管弦楽団 団員一同

曲目紹介

◇シベリウス/交響詩「フィンランディア」

ヤン・シベリウスはフィンランドの、なごみ管弦楽団で取り上げた中では一番新しい作曲家です。本日取り上げるフィンランディアは 1899 年、フィンランドが帝政ロシアの支配下にあった時代に作曲されました。

この曲は 3 つの部分で構成されており、序奏は圧制下の迫害をしめしています。中間部では木管で賛美歌にも使われている美しいメロディを奏でます、この部分は合唱で歌われることもあり、当団の団員でも学生時代に歌った人がいるようです。そして結尾部では高らかに勝利をうたいあげて曲は終わります。この曲はフィンランドの第 2 の国歌といわれており、帝政ロシア支配下ではフィンランドへの愛国心を喚起するとして演奏禁止になったという逸話もあります。

◇シューベルト/交響曲第 7 番「未完成」

交響曲は通常 4 楽章構成が多いのですが、この曲は 2 楽章までしかありません。正確に言うと、3 楽章ははわずか 9 小節だけしかオーケストレーションがされずに放棄されました(スケッチはほぼ完成していた)。なぜシューベルトが筆を止めてしまったのかには諸説ありますが、筆者は「2 楽章で素晴らしく音楽が完成されてしまったために、3楽章がかけなくなってしまった」説を推したいです。それほどに、この曲の迫力と、美しい旋律は私の心を掴むものでした。

【第一楽章】重く苦しいうめきのように、チェロ・コントラバスが響き出します。これは2つの楽章を連携する重要なモチーフになります。そこから、まるで枯れた畑の、暗い空に泣く鳥のような、美しくも悲しい歌が始まります。その暗い現実の中で見る楽しくて暖かい夢のように、チェロから奏でる少し明るい第2主題。束の間の夢は突然終わりを告げ、最初の重低音がなったかと思うと、不安げな旋律が激しさを増していきます。主題が展開されながら、もの淋しいロ短調の和音によって暗い情景を私たちに残して終わります。

【第二楽章】先ほどの暗い空に陽の光が差し込みます。ホルン、ファゴットの和音と、コントラバスのピチカート。その上に、流れだす美しいヴァイオリンの旋律。物憂げなクラリネットからオーボエに引き継がれた旋律は冷たい激しさをもって吹きすさび反復されます。その強い風がだんだん弱まり、遠くから聞こえるホルンのやまびこが消えていく頃、また、あたたかな日差しが包み込みます。ここまでのモチーフが美しい和音と転調で展開され、ようやく静かな永遠の安息をもって終わります。

◇ベートーヴェン/交響曲第 7 番

【第一楽章・春】慌てたみたいな母親の声を背中に、受験勉強のトンネルから一気に駆け出した。桜の花びら舞い上がる。グラウンドの歓声。サークル勧誘の波。吹奏楽の響き。あれが校長、担任。新しい友達の笑顔はまぶしい。ちょっと恥ずかしい。いやかなり恥ずかしい。でもそっと顔を上げる。真新しい制服の固い襟を一度だけぎゅっと握る。胸を張り、長い廊下をおかしな姿勢で歩き出すんだ。祝祭の空。今日は、たぶん人生で一番若い春。

【第二楽章・夏】妻を亡くしたその詩人は、あと一年だけ生きようと思った。その一年の間に、妻を恋う美しい詩をありったけ残してから、死のうと。だが約束の夏。妻と暮らした故郷の町で詩人の見たものは…。道の傍、焼け焦げた何かの指先に咲く小さな黄色い花。ヒロシマ。地獄の劫火の名で何度も呼ばれることになる、妻の愛した町。詩人のノートは白紙のまま。

【第三楽章・秋】柿、イモ、巨峰、ラフランス。季節限定のスイーツは丹波和栗のモンブラン。かぼちゃのパイ、かぼちゃのシフォン、ピーカンナッツのタルトにバニラアイスのせ。新米。ふかふかほかほか。さんまの塩焼き。七面鳥の丸焼き。グレービーソースにマッシュポテト。カキの土手鍋、カキフライ、生ガキにシャブリ、カキの炊き込みごはん。国とか関係ない。私たちはおいしいものを食べる、平和をかみしめる。手を合わせる。ごちそうさま。

【第四楽章・冬】年末調整、年末進行。大掃除。在庫整理。歳末たすけ合い。ケンタッキーの店先にずらり並んだバイトの笑顔とうず高く盛り上げるチキンの山と店長の睡眠不足とインフルエンザと。え、年賀状?おじいちゃんにアンカ。帰省の切符。屠蘇散とウコン。クリスマス電飾。寒空。今夜は忘年会。来週も忘年会。週末も飲み会。こんなに忙しい大人の生活。あの頃想像できたっけ。でもまあいいや、今年も終わる。人生はまあ楽しい。みんなありがとう、乾杯!