ごあいさつ

本日は「なごみ管弦楽団」第8回定期演奏会にお越しいただき、真にありがとうございます。

私達「なこ管」は8年前に、これから毎年、ベートーベンの交響曲一つずつと組み合わせて「名曲を楽しく演奏し、来て下さったお客様に楽しく聴いて頂く」という目標をたてて船出した小さなアマチュアオケでした。音楽をこよなく愛する仲間達の地道な努力が、この大きな目標を続けてこられたのは、そんな私達を支援して下さる方々のお蔭に他ならず、本当に心から感謝しております。

来年は目標の締め括りとして「第九番、合唱付き」を演奏したい、と望んでいますが、その為にはこれまでに倍する努力を要します。その為にも、これからもまた一歩ずつ、個々に努力し、団結に努めて過ごしていきたいと思います。

さて今回は、ビゼーの名オペラ「カルメン」を素敵な語りのガイド付きで親しみ易くお届けし、後半はベートーベンの革新的かつ豊かな楽想が満ち溢れる名曲「第三番、英雄」に挑戦します。

今回も皆様から笑顔と暖かい拍手を頂けるよう、力の限り演奏いたします。なごみ管弦楽団 団員一同

語り手紹介

藤本しの 

学生時代に、全欧・南北米・豪・中近東・アジア・アフリカ各地約 90 ヶ国を旅行した経験を生かして、旅行会社にて海外旅行企画、世界の秘境ツアーを添乗。

その後、英・仏・独語の通訳として、ダン・タイ・ソン、ヒラリー・ハーン、リチャード・ストルツマン、ゲイリー・カー (NHK「スタジオ・パーク」など ) 氏等、著名なクラシック音楽演奏家や指揮者、オーケストラのアテンドをする傍ら、サントリーホールにおける渡邊暁雄賞・特別賞授賞式、東京オペラシティ、東京芸術劇場、世田谷パブリックシアター、第一生命ホール、横浜国際会議場、NHK 放送技術研究所、富士ゼロックス、近畿日本ツーリスト、オクトーバーフェスト、UBS 証券グループなどの各種イベントの通訳・司会を努める。また、「現代の語り部」として、語り、ナレーション、芝居・映像の分野でも研鑽を積み、積極的に取り組んでいる。

曲目紹介

◇ベートーヴェン/交響曲 第 3 番「英雄」

ベートーヴェン三番目の交響曲。初演は 1804 〜 5 年。ある英雄の思い出に捧ぐ、という表題がつく。第 1 楽章の巨大な展開部と第 2 展開部に匹敵するコーダ。第2 楽章には葬送行進曲、第 3 楽章にはスケルツォ、そして終楽章には変奏曲が配置される。

第 1 楽章

疾走する馬。火を吹くマスケット銃。その男のまなざしはピラミッドのはるか高みを見上げる。あの熱い7月のパリ。歴史の鐘は、アンシャンレジームの終焉とともに彼の登場を予告した。不可能とは小心者が逃げ込む幻影である。ナポレオン・ボナパルト。真の革命は我が手で成さん。進め!進め!地響きのような兵のうねりは、いつしか凱旋の歌となる。

第 2 楽章

神は死んだ。寛容それは追従。謙虚それは臆病。忍耐それは虚無。

宇宙の円環において人間の卑小なること。その円環を偉大なる意志の力を持って超越せよ。

神などに頼らず権力によらず。古き悪しき常識に惰眠を貪る者どもよ。目覚めよ。たとえその夜明けが果てしない虚無であったとしても。フリードリヒ・ニーチェ。それに至る道はかくも孤独だ。

第 3 楽章

川のせせらぎは季節のうつろいを告げ、水車小屋の娘の頬はりんごの色を映す。町は気まぐれ、靴音に鼻歌も弾む。晴れた空はごきげん、雲雀は舞い、僕は足取り軽く、名もなき野の花を美しい名前で呼ぼう。フランツ・シューベルト。偉大なる祖国の作曲家に名を連ね、そして歌の力を誰よりも知っている。

第 4 楽章

辺境の島に生まれ、体格にも恵まれなかった少年は、かの輝かしくも強大な帝国の英雄へと上りつめた。馬上に高らかに胸を張るのは世界精神の具現者か。熱狂とともに見上げた面影、新しい時代の先駆者。しかし、その彼が最後に欲したものを知って、作曲家は絶望とともに賛辞を破り捨てた。ルートヴィヒ・フォン・ベートーヴェン。だがそれでも、この旋律は自由の賛歌となり永遠に鳴り止むことはない。

◇ビゼー/歌劇「カルメン」組曲

本日は皆様をめくるめく情熱的なオペラの世界にご招待します。魔性の美女カルメンを巡る物語。一瞬にしてカルメンに心を奪われるホセ。ホセの婚約者ミカエラ。闘牛士エスカミーリョ。藤本しのさんの素敵なお話が何倍も楽しくなる豆知識をご紹介!

セヴィリア

スペイン南部。レコンキスタと大航海時代の歴史を深く刻んだ町。スペイン観光の中心的都市、行ってみたい!カルメン、ドンジョバンニ、セヴィリアの理髪師など、数多くのオペラの舞台となっています。

竜騎兵

ホセの職業。ファンタジーのようなカッコいい字面ですがあまり意味はないらしく、普通の騎兵、または歩兵のこと。その役割や定義は国や時代によって異なるそうです。

ホセ

ホセの出身地はバスク地方とされていて、スペインでは、独特の文化を誇りながら、やや貧しい地域というイメージだそうです。そんな貧しい村の出身で、竜騎兵もしくは衛兵という手堅い職務に勤しみ、病弱な母親を支えてきた孝行息子が…。生真面目な生き方もほどほどに、ということでしょうか。

タバコ工場

アメリカ大陸との交易の盛んなセヴィリアの名産。若い女の膝の上でしごいたタバコはとりわけ美味であったとかなんとか。女性の就職口など無いに等しかった時代に、カルメン達タバコ工場で働く女性は自立した女性の先駆けだったのです。

闘牛、闘牛士

動物愛護の観点から批判が絶えず本国でも最近は…モテ男エスカミーリョは現在でいうとリーガエスパニョーラのサッカー選手のような?…殺した牛はのちほど美味しくいただくそうです。あと隣国ポルトガルの闘牛は殺さないそうです。

花と酒、カルメンシータ

カルメンの投げた花はバラ…ではなく、強い芳香を放つというのでアカシア、またはミモザという説も。バラは、カルメンその人自身のイメージですね。ホセと酒場で飲む約束をしたマンサニージャ酒とは辛口のシェリー酒。また、劇中カルメンが別名として名乗るカルメンシータ。シータは「カルメンちゃん」「ミス・カルメン」くらいの意味。

ミカエラ

勇敢にも密輸団のアジトに乗り込むミカエラ。アナ雪のアナ、または原作の雪の女王のゲルダを思わせません?オペラでは、おさげの髪型に青系の衣装が定番のようですし。

ビゼー

ごく若い頃から天才の名を欲しいままにした作曲家ですが、カルメンの初演は大失敗。失意のままその三ヶ月後に37歳の若さで急逝しています。斬新すぎたといわれるカルメンの音楽とストーリー。現在でも新鮮味を失うことはありません。